前回へ
目次にもどる
次回へ
 第十回 ベトレヘム 「パンの家」・救い主の生まれた町

    降誕聖堂…コンスタンチヌス帝によるキリスト教公認後に建てられた聖堂で、後代に何度か修復改変されてはいるものの、4世紀にさかのぼる現存する最古の聖堂のひとつである。破壊を免れた理由のひとつは、壁に描かれた「占星術の学者」(東方の三博士・マギともいう)であるという。偉大な先祖の訪問地として、後に東方から来た占領者も敬意を払ったのであろう。内部には、イエス誕生の場所を示す14角の星(マタイ福音書冒頭の系図と関連した数字)と「飼い葉桶」が保存されている。

    ヒエロニムスの洞窟…降誕聖堂敷地内の聖カタリナ教会地下には、聖ヒエロニムス(4〜5世紀)が聖書のラテン語訳(ブルガタ訳)に携わった場所といわれる洞窟がある。中庭の彫像の足元にある髑髏(しゃれこうべ)は、彼の事業を支えた恩人、パウラのものである。

    ミルク・グロット…降誕聖堂のすぐ近く、ヘロデの手を逃れてエジプトに逃げる聖家族(マタイ2章13節以下)が一休みした場所といわれるのが「ミルク・グロット」である。聖母が幼子イエスにお乳を含ませたというのでこの名がある。そのときこぼれたお乳で岩が白くなったとか。エジプトに向かう聖家族のジオラマと数多くのイコンがこの出来事を伝えている。

    羊飼いの荒れ野…救い主の誕生を告げる天使が、夜通し羊の群れの番をしていた羊飼いに現れた場所(ルカ2章8節以下)といわれ、ベツレヘム南部に位置する。記念聖堂には喜びの知らせを告げる天使とそれを驚きの表情で迎える羊飼いが描かれている。周囲に目印らしいものもないこの荒れ野で、「飼い葉桶」のある場所を知っている羊飼いだからこそ、天使のメッセージに反応できたのだということが感じられる。

■降誕物語の比較■

 マタイ 
 ルカ 
イエスの系図(14代×3)
洗礼者ヨハネ誕生の予告(ガブリエル⇒ザカリア)
イエス誕生の予告(主の天使⇒ヨセフ)
イエス誕生の予告(ガブリエル⇒マリア)
(マリアとヨセフの家はベツレヘム
(マリアとヨセフの家はナザレ
(すべて出来事は預言の実現)
マリアのエリサベト訪問/マリアの賛歌(マニフィカト)
イエスの誕生(ベツレヘムの自宅?)
洗礼者ヨハネの誕生/ザカリアの賛歌(ベネディクトゥス)
占星術の学者たちの訪問(「家」)
イエスの誕生(住民登録の旅先ベツレヘム
避難勧告(主の天使⇒ヨセフ)
(「布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。」)
ヘロデの幼子殺しと聖家族のエジプト避難
救い主誕生の知らせ(主の天使⇒羊飼い)
(モーセの生涯に対応)
神殿奉献(シメオンとアンナの預言)
避難解除(主の天使⇒ヨセフ)
ナザレ帰郷
エジプトからの帰還とナザレ移住
神殿訪問