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第十七回  聖堂の呼称   

■ バジリカ(Basilique < Basilica)
1. バジリカとは古代ローマ帝国の大長方形の公共建築様式を指し、その同じ様式で建てられた聖堂をバジリカ式という。コンスタンチヌス帝のキリスト教公認(312年)後、従来のバジリカが聖堂に改造されたり、新たに建築されたりしている。
2. カトリック教会に固有の意味では、教皇により免償その他の特権を与えられた由緒ある聖堂を指す。たとえばローマの聖ペトロ(サン・ピエトロ)大聖堂・聖マリア(サンタ・マリア・マッジョーレ)大聖堂・聖パウロ(サン・パウロ)大聖堂・ラテランの聖ヨハネ(サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ)大聖堂はローマの四大バジリカといわれる。パリではBasilique du Sacre-Coeur de Montmartreがこれにあたる。

■ 司教座聖堂(Cathedral < Cathedrale = Ecclesia cathedralis)
  聖堂内に司教座すなわち司教の権威を象徴する椅子(cathedra)を有する。通常、司教が責任をもつ教会行政単位である教区(diocese)に一つ。ちなみにローマ司教でもある教皇の場合、「聖座」あるいは「使徒座」と呼ばれる教皇座はローマの聖ペトロ大聖堂に、ローマ司教としての司教座はラテランの聖ヨハネ大聖堂に置かれている。パリではNotre-Dame de Parisがこれにあたる。

■ 小教区聖堂
  主任座聖堂と呼ばれることもある。一般にはその聖堂の保護の聖人名で呼ばれ、主任司祭が責任を負う教会行政単位である小教区(paroisse)の聖堂である。教会行政上、洗礼を受けたキリスト信者はかならず何処かの小教区に所属することになっている。たとえば、パリ日本人カトリックセンターの所在地はSaint-Francois Xavierの小教区に属する。

■ 礼拝堂(Chapelle)
  私設聖堂とでもいうべき聖堂で、礼拝のために修道院や学校・病院など、また古くは国王や貴族の城に設けられた聖堂を指す。小教区の主任座ではないため、教会行政上その聖堂に所属する者はいない。たとえば、不思議のメダイのチャペル(Notre-Dame de la Medaille Miraculeuse)やMissions Etrangeresのチャペルがこれにあたる。
  Chapelleという語は、ツールの司教であった聖マルチノ(四世紀・仏)の聖遺物であるcappa(祭服の一種)を、諸侯がそれぞれの城の礼拝堂に安置したため、礼拝堂をcapellaと呼ぶようになったことに由来するといわれる。

■ 祈祷所(oratoire < oratorium)
  oratoireの語は祈りを意味するoratioから派生するもので、礼拝堂よりもさらに小規模な礼拝室(建物の一室など)に当てる。なお、宗教教育を目的として16世紀にイタリアとフランスで始まった司祭の会はオラトリオ会と呼ばれ、その活動手段となった音楽や創作劇の様式もオラトリオといわれる。なお、パリ1区のEglise Reformee de L’Oratoire du Louvre は、1811年以降プロテスタント教会になっているが、もとはフランス・オラトリオ会の聖堂である。