第二十六回 三位一体 Trinitas ---
Pater et Filius et Spiritus Sanctus
■ 三位一体の教えはキリスト教神学の根幹の一つで、これを受け入れるか否かでキリスト教であるかどうかを判断するといえるものである。三位一体は「三神」ではなく、「三つのペルソナ(persona位格)をもつ唯一の神」、換言すれば、「父と子と聖霊である唯一の神」を表す言葉である。この教えは啓示された(神さまから直接伝えられた)真理として受け入れられており、人間の理性だけで理解することはできないけれども、歴史的にその発展を見ることができる。 ■ アリウス派…3〜4世紀にかけてのエジプトの司祭アリウスAriusは、子であるキリストは初めは存在しなかった被造物で、父なる神とは異質の(ヘテロウシオス)存在であると主張した。これは、「三位」すなわち、父と子と聖霊の区別を強調する余りにおちいった説である。現在でもこれに近い立場をとる新興宗教が存在する。 ■ サベリウスSabellius派…アリウスとほぼ同じ時代の人物で、「一体」すなわち、唯一の神を強調する余り、父と子と聖霊は神さまの三つの姿にずぎず、父も子も同じ方であると主張した。彼の説を進めると、人類の救いのために受難と復活を体験したのは父なる神でもあるということになり、「御父受難説」という表現で呼ばれるようになった。 ■ ニケア公会議(325年)…アリウスあるいはサベリウスの主張による混乱を収拾するために開かれた公会議で、三位一体の教えが確認された。重要な人物はアタナシオAthanasiosで、父と子の同質(ホモウシオス)を説いた。この公会議で生まれた信条Credoがニケア信条で、後のコンスタンチノープル公会議による信条とあわせて通常ニケア・コンスタンチノープル信条といわれる。子なるキリストは完全な神であると同時に完全な人間であるという点は非常に重要である。 ■ ベルナルドBernard de Clairvaux…シトー会改革者として知られるベルナルド(11〜12世紀・フランス)は、三位一体を「父と子とその愛」と表現し、哲学的理解の試みでは限界のある三位一体の教えを詩的に表現した。 ■ 表現…「三つのペルソナ、唯一の神」という命題をなんとか表現しようと、以下のようなさまざまな試みがなされている。
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