ひとりの若者が「私がどうすれば神様を見つけることができるか教えてください。」と言って、先生のもとを訪ねました。先生は若者にこのように聞き返しました。
「あなたのその願いはどのくらい強いものですか。」
若者は「この世のどんなものよりも強いものです。」と答えました。
先生は若者を湖に連れて行き、水の中に入って行きました。
首が水面にまで及ぶと、先生は若者の頭に手を載せて水の中に突っ込みました。若者は必死になってもがきましたが、先生は若者が溺れそうになるまで手を離しませんでした。岸にまで戻ると先生はまた尋ねました。
「若者よ、お前が水の中にいたとき、この世のものでお前が一番必要としたものは何だ？」
若者は迷わず「空気」と答えました。
「そうだよ。お前が水の中で空気を望んだように、そのくらいの気持ちで神様を探せば、お前の目は開いて神様を見つけることができるであろう。」
今日の福音でイエスは多くの病人を癒してくださいました。
この他にもイエスは多くの奇跡の業を行われました。
福音でイエスは何のために奇跡を起こされましたか。
神の国を人々に見せてやるために奇跡の業を行われたのです。
神の国には病人もいないし、盲人もいない。みんなが神に向かい合って幸せに満ちているということを見せられたのです。
奇跡を体で体験した人々はその時から神の国のために全生涯をささげることになりました。闇が晴れ朝日が昇ること、みんなが兄弟姉妹となって愛しあおうと努力すること、困難の中でも神のみ旨を求めようと努力すること、主日には主の食卓に集まってともに命のパンを分け合って食べることのできる恵み。
これらすべてが偶然ではなくまさに神が私たちにほどこしてくださる奇跡なのです。
奇跡を体験している私たちは神を渇望しているでしょうか。暮らしの中で神に対する渇きや飢えを感じることがなければ、神の声を聞くことも、神の存在を確信することもだんだん難しくなっていくでしょう。
水の中で空気を望んだ、あの若者のような気持ちで神を求めれば、私たちも目が開け神を見つけることができるでしょう。そのとき私たちの中にはもう神の国が到来しているのです。
アーメン