第十三回 四旬節 Quadragesima-Careme-Lent 回心のとき
復活祭(春分後に迎える最初の満月の直後の日曜日)を準備する40日間。ただし日曜日は常に祝祭の意味があるので除く。復活祭に洗礼を受ける洗礼志願者の最後の準備期間であり、すでに洗礼を受けたものにとっては自分の洗礼を思い出す期間でもある。初日の水曜日は「灰の水曜日」といわれ、典礼祭儀の中で灰を頭に受ける。この期間に肉食を慎む伝統から、四旬節直前にカーニバル(謝肉祭)を祝う習慣のある土地もある。潜伏キリシタンの言葉で「悲しみ節」。 ■ 40という数…イエス・キリストが宣教生活を始める前に荒れ野で40日の断食を行ったという福音書の記述による(マタイ4章1〜11節および平行箇所)。教父(キリスト教初期の時代に教えの基礎を説き明かした指導者)たちの中には、旧約聖書の物語、たとえばエジプトを脱出した民の荒れ野時代(出エジプト記32章13節)やエリヤの旅(列王記上19章8節)などと関連付けるものもある。 ■ 歴史…いつ頃始まったかは定かでないが、記録によれば第一ニケア公会議(325年)時代はすでに定着していたといわれる。 ■ 回心…自分の歩みを神さまに向けて正すこと。聖書の伝統によれば、神さまの前での良い行いとは三つの行為、すなわち祈り・断食・施しで代表され、それぞれ心・体・財産を神さまに向ける行為となっている。また聖書はたびたび、これらが形式的になることへの警告を繰り返し、本来の意味で実践することを強く求めている(マタイ6章1〜18節)。祈り(イザヤ1章10〜17節など)・断食(イザヤ58章3〜14節など)・施し(シラ書3章30節、29章8〜13節など)。 ■ 四旬節の主日は、第一主日が洗礼志願者の受け入れをテーマとするのをはじめ、洗礼志願者の自由な決断のために配慮されている。すでに洗礼を受けているキリスト教徒にとっては、自分の洗礼の記念(思い出し)であり回心する機会となっている。これらはすべて、個人だけの問題に留まらず、共同体的にもとらえられ、社会の悪や罪に対する自分の責任の自覚という側面ももっている。
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