デュノワイエ師の笑顔

福音の道ひと筋に歩みきて     ほほえみ残し師は南仏へ

 

1 月23日は、パリ日本人カトリックセンターにとって、デュノワイエ師の送別会と新年会(2005年度)も兼ねた記念すべき日であった。創設以来30年余、 私たちのセンターを育て導いてこられた師の、はかり知れない大きな功績については、ここで今更贅言(ぜいげん)をつくすまでもない。
新装成ったパリ外国宣教団の会場は、師の人徳を慕い、別れを惜しんで集まった人たちで満ち溢れた。私たちのささやかな、しかし心のこもった感謝の贈り物を 受けとられた後、乞われて別れのスピーチに立たれた師の声は一時震えて杜(と)切(ぎ)れ、短い沈黙が流れた。凝縮された長い年月の思いが溶け、こみあげ る感慨を私たちも分かち合ったのである。だが再び続いた声は何時もの明るさに戻っていた。
南仏の新しい住まいでは 既に新しい仕事が待っているとのこと。「だから心配しないで下さい。」と師は言われた。「皆さんと別れるのはとても淋しいけれ ど...」更に最後は自分に言い聞かせるように、「あそこには昔日本で働いた同僚も四人いるし...」顔にはあのほほえみがあった。私たちのしめつけられ ていた心は何かしらほっとした。たとえ地理的には離れようと、面影は近くにとどまり心は通じ合うではないか。
新年会の部では、巧みな進行係によって、コンサートやゲーム、歌も混じえ和やかに進み、旅立つ人へのいたわりがあった。皆つとめて明るく振舞い、よく笑 い、せい一ぱいの声をあげて歌い、童心に帰り手をたたき、足ぶみし、楽しく盛り上がった。師は終始ニコニコしておられた。そしてこの笑顔こそ これまで常 にセンターを包んでいたあの家庭的な温かさの根源だったのである。そこから発する光があたかも燈台の灯のように、世の荒波の中で疲れた人々をひき寄せ、慰 めと力を与え続けてきた。センターに来られた方は誰しも経験があるに違いない。閉館まぎわに、たった一言、師に「今晩は」を言うためにかけ込んでくる夜の 訪問者は温かく迎えられ心充たされて帰っていく。そんな光景を何度も目にしたことがある。
内から自然に湧き出てくる笑顔 ― なんとすばらしく美しく強い力をもっていることだろう。笑顔は伝わっていく。笑顔によってどんなに世の中が明るくなることだろう。笑顔は光そのもの、愛の 灯だ。師は笑顔を私たちに贈って下さった。笑顔があれば団結がある。かけがえのないこの貴重な贈り物を大事にし、周囲の人々に伝えていきたいものである。

(2005年1月26日、ドベルグ 美那子)

 

 

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